持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
SDGsの目標を達成するためには、あらゆる資金や人材を動員して、政府、市民団体、民間企業、国際機関などが共に取り組んでゆく必要がある。ゴール17は、特定の開発課題を取り上げるのではなく、ゴール1から16までを達成するための、資金の確保、実施手段の強化に向けた課題を提起している。
ゴール17は17.1から17.19までの19個のターゲットから構成される。まず、17.1から17.5では様々な資金源の動員がテーマとなる。17.1では税収などの国内資源の活用が目指される。17.2では、政府開発援助(ODA)のコミットメントについて数値目標が提示される。17.3はODA以外の追加的資金の動員が求められる。例えば、海外直接投資や(南北協力以外の)南南協力・三角協力の促進である。17.4は途上国の債務負担の問題を取り上げている。2000年には重債務貧困国を救済するための国際的な措置が講じられたが、このような事態に再び至らぬような体制が必要である。
17.5では後発開発途上国における投資促進がテーマとなっている。社会的インパクト投資/社会的インパクト評価などのスキームを活用しつつ、持続可能な開発のために多様な資金源を活用してゆくことが期待される。
17.6から17.8は技術開発に関するターゲットが整理される。17.6では、科学技術イノベーションの推進のために、地域的・国際的な協力を向上させることが目指される。17.7では開発途上国に対し、環境に配慮した技術を移転し普及させることが課題として示される。17.8は後発開発途上国における、ICT技術の利用の強化に関する目標である。2016年には、後発開発途上国における科学技術イノベーションの応用範囲の拡大をめざす技術バンクが設立された。
17.9は能力構築に関するターゲットであり、途上国の国家計画づくりに向けた能力構築がテーマになっている。
17.10から17.12までは貿易面のターゲットが示される。17.10では、WTOのルールに基づいた多角的貿易体制を促進することが目指される。17.11では、世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させるという具体的目標が提示されている。17.12は後発開発途上国にとっての無税・無枠の対外市場アクセスに関する目標である。貿易を通じた途上国の開発を進めるため、ドーハラウンド(Doha Development Agenda: DDA)を通じた国際協調の枠組みが設けられている。
17.13から17.15までは体制面、政策・制度的整合性に関するターゲットである。17.13では世界的なマクロ経済の安定が求められる。17.14では、持続的開発に向けて政策を一貫させる必要性が示される。17.15では、貧困撲滅と持続可能な開発のための政策を遂行するにあたり各国のリーダーシップを尊重することが求められる。
17.16と17.17はマルチステークホルダー・パートナーシップに関するターゲットである。17.16では、持続可能な開発のための、グローバル・パートナーシップを強化することが目指される。17.17は、公的、官民、市民社会のパートナーシップの奨励についての目標である。
最後に17.18と17.19はデータ、モニタリング、説明責任に関するターゲットである。17.18では、開発途上国での能力構築支援を強化し、データの入手可能性を向上させることが目標になっている。17.19では、開発途上国における統計能力の強化が課題として示されている。
ゴール17のターゲット
17.1 | 課税及び徴税能力の向上のために国内資源を動員する |
17.2 | 先進国は、開発途上国に対するODA に係るコミットメントを完全に実施する |
17.3 | 開発途上国のための追加的資金源を動員する |
17.4 | 開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国の債務リスクを減らす |
17.5 | 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入・実施する |
17.6 | 科学技術イノベーションに関する国際協力を向上させ、知識共有を進める |
17.7 | 開発途上国に対し、環境に配慮した技術の開発・移転等を促進する |
17.8 | 後発開発途上国のためICTをはじめとする実現技術の利用を強化する |
17.9 | 開発途上国における能力構築の実施に対する国際的支援を強化する |
17.10 | WTOの下での公平な多角的貿易体制を促進する |
17.11 | 開発途上国による輸出を増やす |
17.12 | 後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する |
17.13 | 世界的なマクロ経済を安定させる |
17.14 | 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する |
17.15 | 政策の確立・実施にあたり、各国の取組を尊重する |
17.16 | 持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する |
17.17 | 効果的な公的・官民・市民社会のパートナーシップを推進する |
17.18 | 開発途上国に対する能力構築支援を強化し、非集計型データの入手可能性を向上させる |
17.19 | GDP 以外の尺度を開発し、開発途上国の統計に関する能力を構築する |
用語
南南協力・三角協力
「南北協力」は先進国による開発途上国に対する協力、「南南協力」は開発途上国間の協力、「三角協力」は先進国と開発途上国とが連携して、第三国の開発途上国に協力することを指す。南南協力や三角協力では、同じ開発途上国としての開発経験を共有することで、協力の効果が高まることが期待される。
重債務貧困国
対処できないほどの債務を抱えている貧困国。1990年代の最貧国の債務帳消しを求めた国際的な運動「ジュビリー2000」を背景に、1996年にIMFおよび世界銀行が中心となり重債務貧困国の債務救済のためにHIPCイニシアティブを導入、2006年には多国間債務救済イニシアティブ(MDIR)へと拡充した。世界銀行によれば、これらイニシアティブの下、国際機関や各国政府を含む国際金融界の協調により、2018年1月時点で36カ国(うちアフリカ30カ国)が救済措置を受けている 。
社会的インパクト投資/社会的インパクト評価
社会的インパクト投資とは、「財務的リターンと並行して社会的および(もしくは)環境的インパクト(当該事業や活動で生じた短期・長期の社会的・環境的変化)を同時に生み出すことを意図する投資」である。 社会的インパクト評価とは、「当該事業や活動で生じた社会的・環境的インパクトを定量的・定性的に把握し、当該事業や活動に価値判断を加えること」である。
技術バンク
2016年12月に国連総会で正式に発足した「後発開発途上国(LDC)のための技術バンク」。 技術バンクを通じてLDCにおける科学技術イノベーションの応用範囲の拡大を目指す。 2011年の第4回国連LDC会議で採択されたイスタンブール行動計画において、取組みの優先分野に 科学技術を含むLDCの生産能力が掲げられ、SDGsの「ターゲット17.8」へと取組みが具体化された。 トルコ政府が技術バンクの本部を同国ゲブゼに誘致することとなっており、開発パートナーに支援を 呼びかけるとともに、今後5年間で毎年200万ドルの拠出、人材や施設の提供を約束している。
ドーハラウンド(Doha Development Agenda: DDA)
2001年11月にカタールの首都ドーハでのWTO第4回閣僚会議で立ち上げが合意された、多角的な貿易自由化のための新たな交渉(ラウンド)。正式名称は「ドーハ開発アジェンダ」。交渉分野は、農業、鉱工業品・林水産品の市場アクセス、サービス、アンチ・ダンピングなどのルール、貿易円滑化、環境、途上国の開発、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)の8分野。先進国主導の交渉に反発する途上国の意向を踏まえ、「開発アジェンダ」が正式名称に採用され、貿易を通じた途上国の開発が重要課題の一つに設定されている。
マルチステークホルダー・パートナーシップ
官民双方の様々なステークホルダーが自発的かつ協調的に、共通の目的達成のためにリスクや責任、専門的知見や資金などのリソース、利益を共有することに合意して具体的な作業を共同で行う、制度化された関係。代表例として、、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)、国連機関間科学技術イノベーション(STI)タスクチームなどで構成される技術促進メカニズム等がある。