ゴール11:住み続けられるまちづくりを

ゴール11は都市の居住に関する問題に焦点を当てている。今日、世界人口の半数以上は都市部に居住している。都市人口比率はさらに高まり、2030年には6割の人々が都市に居住するようになると推定される。

都市部では、財、サービスや交通手段を効率的に提供することが可能であり、技術革新や経済成長をもたらすチャンスが広がる。都市は農村部の人々を引き付ける魅力が大きく、毎年多くが就業機会を求めて都市に流入する。もしもこうした人々が満足な暮らしのできる就業機会を得られなければ、流入者はスラムに流れスラムは拡大する。スラムの拡大は、治安の悪化、環境汚染など深刻な問題を引き起こし、貧困層の生活をさらに厳しいものとする。

スラムの拡大と並び、大気の汚染と水質の汚濁も、都市の居住環境を悪化させる要因になる。大気汚染のレベルは世界の多くの地域で悪化傾向があり、各地で喫緊の課題である。スラム問題や大気汚染への対処を含め、都市が全ての人々に快適で便利な生活を提供し、持続的な開発が可能になるための方向性がゴール11で示される。

我が国では、SDGsの達成に向けた優れた自治体を特定する「SDGs未来都市」事業が2018年から実施されている。少子高齢化を背景に、一定の地域に必要な都市機能と公共サービスを集中させるコンパクトシティや、ICT等の新技術を活用し持続可能な都市化を目指すスマートシティのコンセプトが注目を集めている。

ゴール11は11.1~11.cまでの10個のターゲットから構成される。11.1では都市のスラム問題への取組みが求められる。11.2では都市部において、公共交通サービスが全ての人々に提供されることが目指される。11.3では都市化の促進と管理能力の強化が取り上げられる。続く11.4では文化・自然遺産の保全、11.5では防災対策がテーマとなる。災害リスク管理をビジネスモデルに統合し、ビジネスの強靭性(レジリエンス)を高めることが求められる。11.6は大気汚染や廃棄物管理を改善すること、そして11.7ではすべての人々に緑地や公共スペースを提供することが目指される。11.aと11.bでは開発計画や各種政策の実施を通じて、様々な都市問題の改善や防災対策を進めることが目標となる。11.cでは技術、経済面の支援により強靭な構造物を途上国で建造することが課題として示される。

ゴール11のターゲット

11.1 住宅や基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する
11.2 交通の安全性改善により、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する
11.3 参加型・包摂的・持続可能な人間居住計画・管理能力を強化する
11.4 世界文化遺産・自然遺産を保護・保全する
11.5 災害による死者数、被害者数、直接的経済損失を減らす
11.6 大気や廃棄物を管理し、都市の環境への悪影響を減らす
11.7 緑地や公共スペースへのアクセスを提供する
11.a 都市部、都市周辺部、農村部間の良好なつながりを支援する
11.b 【総合的な災害リスク管理を策定し、実施する
11.c 後発開発途上国における持続可能で強靭な建造物の整備を支援する

用語

SDGs未来都市

日本政府(内閣府地方創生推進事務局)が「自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案した」として選定した日本の自治体を指す。これは、政府が進める地方創生(まち・ひと・しごと創生法)の一環として進められてきた環境モデル都市、環境未来都市選定の延長線上にある。SDGs未来都市選定は平成30年(2018年)から始まり、初年度は29都市が選定された。

コンパクトシティ

一定程度集まって住み、そこに必要な都市機能と公共サービスを集中させ、良好な住環境や交流空間を効率的に実現する集約型都市構造を持つ都市。日本の地方都市等で見られる拡散型都市構造(郊外化、中心市街地の空洞化)による、生活利便性(教育・医療福祉施設や商業・文化施設へのアクセス)の低下や都市経営コスト(道路・ライフラインの維持管理)の増大、まちの魅力(人的交流や賑わい、文化機能)喪失等に対する解決策とされる。集中型都市構造による自動車依存からの脱却や自然との共生といった環境負荷低減の側面も注目される。

スマートシティ

都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行なわれ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区。都市課題がハード面及びソフト面の多岐にわたることから、スマートシティは、1)スマート・エコノミー(経済活動・産業)、2)スマート・ラーニング(教育)、3)スマート・ガバナンス(行政サービス)、4)スマート・モビリティ(社会インフラ、物流、交通)、5)スマート・エネルギー(環境・資源)、6)スマート・リビング(安全・QOL、インクルージョン)といった6つの“スマート”要素に概ね整理される。

レジリエンス

ハザードに曝されたシステム、コミュニティあるいは社会が、リスクマネジメントによって基本的な機構及び機能を保持・回復することにより、ハザードからの悪影響に対し、適切なタイミングかつ効果的な方法で抵抗、吸収、受容し、またそこから復興する能力。リジリエンスは4つの“R”で構成される:1)Robustness(頑健性:耐震、耐火、耐水等ハード面での外力に対する強さ)、2)Redundancy(冗長性:バックアップ機能、多重システム等平時には一見無駄と思われる災害時に必要な機能の有無)、3)Resourcefulness(臨機応変性:被害状況、対応の優先順位及び対応可能な資源・人員の把握と動員能力)、4)Rapidity(迅速性:損失・被害拡大抑制のための災害対応・復興計画立案能力)。 ※ ハザード:人命の損失、負傷、財産への損害、社会的・経済的崩壊、もしくは環境破壊を引き起こす可能性のある、潜在的に有害な自然事象・現象、人間活動。

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