ゴール16:平和と公正をすべての人に

持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、全ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

ゴール16では治安、司法、公正といったガバナンスに関する諸問題が取り上げられている。持続的開発を進めるためには、人権や法の支配を尊重し、透明性が高く効率的な行政機関を作り上げることが必要である。

戦後、多くの国々で戦争のない平和的な暮らしが続けられたが、地域によっては依然として暴力を伴う紛争にさらされている人々がいる。紛争による死者の数は、先進国と途上国との間で大きな差があり、途上国での比率は先進国の二倍になっている。さらに司法へのアクセスが無く、基本的人権が保障されていない国も少なくない。世界の全ての人々が平和で公正な社会で過ごせるよう、様々な取り組みが進められている。だが、現場での暴力や人権侵害の実情は把握が容易ではない。

贈賄や汚職も深刻な問題である。とりわけ所得水準が低い国ほど贈賄が増える傾向が見られる。開発途上国では、事業ライセンスの取得、納税、建設許可の取得、電気や水道工事といった様々な場面で、賄賂を求められる。こうした習慣の蔓延は、ビジネスの持続的発展に悪影響を及ぼすことになりかねない。

ゴール16は16.1から16.bまでの12個のターゲットから構成される。16.1では暴力の根絶、16.2では子供に対する虐待や搾取の防止が求められる。16.3では司法へのアクセスの保証、そして16.4では違法な資金や武器の取引といった組織犯罪の根絶が目指される。続く16.5から16.10ではガバナンスに関するターゲットが示される。16.5は公共および民間部門の双方における汚職の撲滅を目指す。16.6は公共機関の透明性と説明責任の確保に関するターゲットである。民間企業においても、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を促す仕組みは必要であり、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資するものとして、我が国でも金融庁等によってコーポレートガバナンス・コードスチュワードシップ・コードが制定されている。16.7は政治的意思決定プロセスの改善に関するものであるが、民間企業においてもステークホルダー・エンゲージメントを通じて、最高ガバナンス機関を管理することが求められる。

16.8は国際機関における開発途上国の参加拡大、16.9は国民への法的な身分証明の提供、16.10は情報へのアクセスの確保が目指されている。そして、16.aでは暴力やテロをなくすための国際機関の強化、16.bでは非差別的な法規及び政策の推進が課題として示される。

ゴール16のターゲット

16.1 暴力及び暴力に関連する死亡率を減らす
16.2 子どもに対する虐待や暴力・拷問をなくす
16.3 司法への平等なアクセスを提供する
16.4 違法な資金及び武器の取引などをなくし、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する
16.5 汚職や贈賄を大幅に減らす
16.6 透明性の高い公共機関を発展させる
16.7 包摂的で参加型な意思決定を確保する
16.8 国際機関への開発途上国の参加を拡大・強化する
16.9 すべての人に出生登録を含む法的な身分証明を提供する
16.10 情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する
16.a 暴力やテロをなくすための国家機関を強化する
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し実施する

用語

コーポレートガバナンス・コード

実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの。コーポレートガバナンスとは、企業が、株主をはじめ顧客、従業員、地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みである。同コードが適切に実践され、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、経済全体の発展にも寄与するものと考えられている。

スチュワードシップ・コード

機関投資家が「責任ある機関投資家」として「スチュワードシップ責任」を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めたもの。スチュワードシップ責任とは、機関投資家が、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」の中長期的な投資リターン拡大を図る責任である。日本では金融庁が2014年に日本版スチュワードシップ・コードを定めている。

ステークホルダー・エンゲージメント

企業が社会的責任を果たしていく過程において、相互に受け入れ可能な成果を達成するために、対話などを通じて、株主をはじめ顧客、従業員、地域社会等のステークホルダーと積極的にかかわりあうプロセス。

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