ゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう

強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

ゴール9が対象とするのは、インフラ、産業化、イノベーションである。これらは持続的な開発をすすめる上で重要なテーマである。インフラの整備によってビジネスや社会生活の基盤が提供される。例えば農村での道路整備は、農民が市場に生産物を届けることを容易にし、住民の学校や病院へのアクセスも改善する。また、産業化の進展は経済成長を牽引するのみならず、雇用を創出することで所得格差の是正に貢献する。さらに、各方面のイノベーションによって産業技術の幅が広まり、新たな技能が開発される。

世界全体での製造業付加価値のGDP比率を見ると、1995年の21%から2014年の15%までこの比率は低下している。その分、サービス産業の比率が高まっている。途上国で産業化を進め先進国との格差を縮めるには、技術革新や生産拡大に向けた大規模な投資が必要となる。だが、研究開発のための投資は地域で大きな偏りがある。先進国では2013年にはGDPの2.4%が研究開発投資に向けられたが、途上国、特に後発開発途上国では、この比率は0.3%以下にすぎなかった。途上国の研究開発を促すため、幅広い分野での支援が必要となる。

ゴール9は9.1から9.cまでの8つのターゲットから構成される。まず9.1はインフラ整備についてのターゲットである。全世界において質が高く信頼できて強靭なインフラを開発することが目指される。9.2では、開発途上国においてGDPに占める産業セクターの割合を増加させることが求められる。そして9.3では小規模な製造業等に金融と市場へのアクセスを拡大することがテーマである。例えば、本邦企業は、タイやミャンマーの農業者に対して、天候指標ベースで保険金を支払う天候インデックス保険のサービスを提供しているが、小規模事業者への金融アクセスを促進するアプローチとして注目される。

続く9.4では環境に配慮したインフラ開発と産業化を進めることがテーマとなっている。9.5ではイノベーションの促進のため研究開発者の増員と予算の増額が目指される。研究開発は教育機関や公的機関だけの課題でなく、民間企業においても実施体制の強化が求められる。経団連は企業のイノベーションを通じてSDGsの達成を進めることを、「Society 5.0 for SDGs」という標語で提唱している。

実施体制に関する9.a、9.bおよび9cのターゲットでは、それぞれ開発途上国でのインフラ開発の促進、イノベーションの支援、そして後発開発途上国でのインターネット・アクセスの拡大が課題として提示されている。

ゴール9のターゲット

9.1 経済発展と福祉を支える持続可能で強靭なインフラを開発する
9.2 雇用とGDP に占める産業セクターの割合を増やす
9.3 小規模製造業等の、金融サービスや市場等へのアクセスを拡大する
9.4 資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大により持続可能性を向上させる
9.5 産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる
9.a 開発途上国への支援強化により、持続可能で強靭なインフラ開発を促進する
9.b 開発途上国の技術開発・研究・イノベーションを支援する
9.c 後発開発途上国における普遍的・安価なインターネット・アクセスを提供する

用語

天候インデックス保険

天候インデックス保険とは「損害と関係がある、天候指標(気温や降水量など)を定め、それが事前に定めた条件を満たした場合に、定額の保険金が支払われる保険」を指す。 実際の損害とは関係なく、天候指標ベースで保険金を支払うため、保険金支払いの際に損害調査を実施しない。

Society 5.0

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く新たな社会を指す。第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱されている。

SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

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